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2008/07/14

[書評] 栗田 有起 / 『オテルモル』

オテルモル (集英社文庫 く 21-3) 栗田 有起 / 『オテルモル』 / 2008-06 / 集英社文庫 / B+

初めて手にした栗田有起の作品だけど、とってもよかった。 書店の店頭で初めての作家の小説を手に取って、結果、素晴らしいと感じたのはちょっと久しぶりかも。

ストーリーはとってもへんてこ。全館地下に立てられたホテルのフロント(受付)嬢として採用された「そろそろ若くない、でもとりえも何もない」女性のお話し。

オテル・ド・モル・ドルモン・ビアンに窓はひとつもない。 土のなかにあるのだから当然であろう。 したがって建物に陽は一筋もささない。 ホテルは夜を過ごす場所だ。 眠るための場所だ。 だから太陽の光はいらない。 むしろ邪魔。 ホテルの創設者はそう考えたらしい。(p.90)

光と影。ダンスミュージックと静寂。混沌と秩序。
何もかもが少しづつねじれている地上と、あるべきものがあるべき通りに配置され、与えられた名前の通りの機能を果たしている地下。
そのコントラスト。

「それはちょっと出来すぎていてまるで『お話しみたい』」という地上。
「それはちょっと出来すぎていてまるで『お話しみたい』」という地下。
それなのに、ふとした細部がとつぜんスポットライトを浴びたかのようにリアルに浮かび上がり、読み手の心をかき乱す。

「ここでわがオテル・ド・モル・ドルモン・ビアンの理念をお話ししましょう。 わたくしどものオテルはいわゆるビジネスホテルと呼ばれるものですが、それだけのものではありません。 オテル・ド・モル・ドルモン・ビアンがお客様に提供したいもの、それは最高の眠り、そこからみちびかれる最良の夢です。 わたしくしたちがいま本当に求めていて、手に入れるのがひどく難しいものたちです。(p.58)
永遠の安らぎではなくてひと時の眠り。 眠った後にはまたちゃらんぽらんの日常。 そのコントラスト。

ゆるゆるなんだか、激しいんだか。ほんわかしているんだかどぎついんだか。 よくわからないけど魅力的な作品でした。

Amazon.co.jp: 『オテルモル (集英社文庫 く 21-3)』

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