[書評] 伊坂 幸太郎 / 『死神の精度』
伊坂 幸太郎 / 『死神の精度』 / 2008-02-08(2005) / 文芸春秋 / B
死神、といっても、地獄にいて千里眼で僕たちの罪を見張っているわけではない。
言ってしまえば単なる調査員。
僕たちの隣にいて、調査部が下した仮判決(?)を本当に実行するべきかどうかを報告するだけの存在。
答えは「可」もしくは「見送り」の二つにひとつ。といっても、圧倒的に「可」なんだけど。
まずはこういう死神像をつくったということに拍手したいですね。
見た目は人間そのもの。だけど、人間のような感情は持たない。人間にも興味はない。
人が生きようが死のうが、その判断は単なる職務でしかないのだから。
さらに、実際に手を下す(殺す)わけでもない。
伊坂作品に特有の作り物めいた世界。そこにふっと差し込まれる人肌のぬくもり。
伊坂作品に特有の虚をつく感じ。そこにふたたび持ち込まれる妙にリアルな手触り。
これが、上にあげたような死神像とすごくマッチしていて、読書の喜びに満たされます。
生きることも死ぬことも、本人の意思とは無関係にやってくる。
そこまでは伝えるけど、「だから今日を精一杯生きよう」といったメッセージはなし。
淡々と人が死ぬ。どれだけもがこうとも。死にたいと口走っていても。人は死ぬ。
実はこの本、ミステリーファンにはちょっといまいち、と思えるところがあります。
筋が通らないところがあるんです。
タイトルにもなっている「死神の精度」で、狂ってしまうことがあるんです。
伏線として成り立たせるためには必要なんだけど、この作品の死神というありかたとはそぐわないところが。
だけど、私はそれを減点とはおもいませんでした。 納得はいかないけど、むしろ逆にそれもまた人生、というおかしみ(哀しみ)に見えたので。
Amazon.co.jp: 『死神の精度 (文春文庫 (い70-1))』
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